魔性の女を主人公にした手塚治虫の異色作2作品を収録

手塚治虫の作品を読み続けると、そのジャンルやテーマが多岐にわたることに驚かされる。今回、三栄書房から発売される黒の手塚治虫シリーズ『魔性』は、その中から『ばるぼら』『I.L』という魔性の女を主人公にした2作品が収録されている。作品についての内容は次の通り。

『ばるぼら』
ホームレスでアルコール依存症のバルボラ。彼女が愛した芸術家はなぜか成功に導かれる。魔女か芸術の女神か、謎に包まれたバルボラの正体。その自由で気ままな性格に、男は翻弄されつつも愛さずにはいられない。

『I.L』
棺の中に入るとどんな姿にも変身できる人外の者“女優”アイエル。身代わりの依頼を受け、さまざまな事件に巻き込まれるも、その度人間という生き物の思わぬ側面を見ることになる。愛と憎しみのファンタジー。
(裏表紙の解説から引用)

2つの作品は、主人公が魔性の女という部分を除いては、まったく性質の違う作品といえる。ただし、手塚治虫はどちらにおいても“魔性”という存在を人間社会に置くことで、人間の“本性、性質”というものを浮き彫りにしようと試みているようだ。そして人間に隠された狂気や性癖を白日のもとにさらし、人間とは? 生きるとは何か? を問いかけている。

一見してちょっとエッチなアダルトファンタジーだが、そうした作品のなかでも手塚治虫イズムが垣間見られるのがさすがだ。手塚治虫作品のなかでは意外と知られていない作品だが、読めば読むほど味が出るはず。2作品がまとめて読めるこの機会に、ぜひ比べて読んでみてはいかがだろうか。
三栄書房の黒の手塚治虫シリーズ第5弾『魔性 ばるぼら&I.L』は価格639円(税別)で12月8日より全国のローソンで発売中。

三栄書房サイト
http://www.sun-a.com/

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