昨年の3月27日にグランドオープンした「トレッサ横浜」は、トヨタのショールーム機能に加え、全220店の専門店が揃う大型ショッピングシティ&オートモールだ。
ここには大型スーパーをはじめ、魅力的なカフェや雑貨店が出店しており、平日でも多くの買い物客で賑わうスポットである。
この南棟1Fの「タミヤ プラモデルファクトリー(以下TPF)」は、プラモデルやR/Cカーでお馴染みのタミヤが贈るアンテナショップだ。
量販店やWebショップに押され“街のおもちゃ屋さん”が次々と閉店に追い込まれている今、プラモデルを作る楽しみを伝える“伝道師”も年々少なくなっている。
こうした流れの中でオープンしたTPFは、プラモデルメーカーのブランド力を前面に押し出し、これまで街のおもちゃ屋さんがユーザーに伝えてきた“作る楽しみ”を訴求する試みとして業界からも注目されている。
今回は来月一周年を迎えるTPFを通し、プラモデルマーケットの現状と未来について同店プラモデルマスターの長谷川さんに伺ってきた。
──長谷川さんのプラモデル作りのキャリアを教えてください
タミヤ プラモデルファクトリー横浜店
長谷川プラモデルマスター
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- 長谷川さん:
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単純にプラモデル作りのキャリアで言えば40年、プロモデラーとしての活動は20年くらいでしょうね。僕がプロモデラーになるきっかけとなったのは、地元の模型店にプラモデルのクラブがあって、そこに所属しながら作り方の技術を身に付けてイベントに作品を出していた時、当時から活躍されていたプロモデラーに声を掛けられたことでした。
これまで作ったモデルの中で想い出に残っているものは、本当に色々ありすぎてひとつを選ぶのは本当に難しいんだけど、あえて挙げるなら初めて塗装まできっちり仕上げた1/72のメッサーシュミットや、中学生時代にハマリにハマったアポロ計画の打ち上げロケットのプラモデルですね。
この辺りは子供の頃になかなか買ってもらえなかったので、今では反動で作ってないキットを家にいくつもキープしちゃってます。
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──TPFのマスターという立場から、今のプラモデルのマーケットについて気付いた点をお聞かせください
- 長谷川さん:
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まず本当に驚いているのが、僕が予想していた以上に世の中のお父さんや子供たちの間で、今でもプラモデルに対する情熱が燻り続けているんだな、という事です。
先日TPFでプラモデル作りのアイデアや技術を競う『第1回モデラーズコンテスト』を開催したんですけど、実を言うと企画当初は「ミニ四駆が数台集まれば良いかな」程度の認識だったんですよ。
ところが実際に蓋を開けてみると、応募総数は全部で107作品も集まっちゃいました。その内容もミニ四駆だけじゃなく、戦車や軍用機、艦船、F1など、昔から人気の高いジャンルでの出品が多いんですよね。
最近はプラモデル以外にも様々な趣味や面白い遊びがありますから、プラモデルというカテゴリーが目立たなくなるのは仕方の無い事だとは思うんですよ。
ただ、こうやって作った作品を発表する場所さえ提供してあげれば、やっぱりみんな作るんじゃないかと。
僕がプロになる前にコンテストに応募していた時の楽しさは、今でもちっとも変わってないって事なんですよ。
だから今後も第2回、第3回とモデラーズコンテストを開催して、世の中の隠れプラモデルファンの背中を押してあげたいと思ってるんですよね。
──新しいファン層の獲得という点ではいかがでしょう?
- 長谷川さん:
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確かにTPFはプラモデルを良く知らない人たちも多く集まる場所柄、生まれてはじめてプラモデルを作るという相談を受けることもあります。
そういった意味では作る楽しみを伝えたいという、店のコンセプトが間違ってなかったとは思うんですよね。
ただちょっとネガティブな話になっちゃいますけど、今のプラモデル業界には初心者が越えにくいハードルがあって、TPFみたいなアンテナショップじゃない、街のおもちゃ屋さんが新しいファンを獲得する環境では無くなっちゃってると感じてるんですよ。
例えば僕らが子供の頃には、リアルさを追求したプラモデルと、簡単に作れて動かして遊べるプラモデルの両方が充実してた。
クルマのプラモデルを電池とモーターで走らせたって、ラジコンやリモコンで無い限り、すぐに壁にぶつかって止まってしまう。時には壊れる事だってあるよね。
でも、子供にはそれが本当に楽しい。
作って壊してを繰り返えせばプラモデル作りの技術も向上して、作るのが難しいリアルなプラモデルに挑戦する楽しさも自然に覚える事になる。
でも今の国産プラモデルには、初心者の入り口という商品は本当に少なくて、どれを選んでも初心者には完成させるのが難しいハードルの高いキットだったりする。
組み立てて遊ぶミニ四駆の人気が高まっているのも、実はそれ以外に初心者が作って遊べるプラモデルが少ない事が影響している気がするよね。
──初心者向けの商品が少なくなった理由としては何が考えられますか?
- 長谷川さん:
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やっぱり趣味の世界が多様化することで、プラモデルのマーケット自体が縮小して、積極的にプラモデルを購入しているのが大人の上級者が大半になってしまった事が大きいでしょうね。
上級者は、常に技術の進化、リアリティの向上をメーカーに求める傾向が強くなります。
その状況の中で、例えばタミヤが数百円で買えて、電池とモーターで動く戦車のプラモデルを出したならば「今さらオモチャみたいな商品を出しやがって」と既存の顧客に批判されるかもしれないし、場合によってはタミヤというブランドから離れていくかもしれない。
それはただでさえ多いとは言えないプラモデルファンを各メーカーが奪い合っている現状では、企業にとって致命的になってしまうかもしれない。これは何もタミヤに限ったことではなく、他のメーカーにとっても同様です。
実際、プラモデル誕生50周年とあわせて開催された展示会では、どのブースに足を運んでも大人向け、上級者向けのモデルばかりでした。
だけど未来を見据えたアクションを起さなければ、永遠に新しいファンを獲得することは出来ないし、そろそろ未来に目を向けるターニングポイントが来ているんじゃないの? とは感じているんですよ。
もちろん僕は上級者向けの新製品も大歓迎なんだけどね。
──プラモデル業界の未来は悲観的なのでしょうか?
- 長谷川さん:
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それはやり方ひとつであって、悲観的なことばっかりじゃ無いですよ。
街のおもちゃ屋が少なくなっている状況だって、確かにプラモデルを買う主な場所が量販店になっている影響は大きいけれど、確実な固定客を確保しているお店が後継者がいなくて閉店するケースだって少なくないんです。
逆に後継者に上手く引き継げた時には、店の絶版品や大手量販店では扱えない輸入キットをインターネットに情報を公開し、全国のお客さんを相手にしたビジネスで成功している例もあります。
そしてTPFのようなオープン一周年にも満たない店が開催したモデラーズコンテストに、100以上もの作品が集まったり、店に設置しているミニ四駆コースが週末には必ず賑わっている事を見ても、潜在的なファンは決して少なくないのは明らかじゃないですか。
プラモデルメーカーも街のおもちゃ屋も、今のお客さんを大切にすることを忘れずに、これから未来の新しいお客さんをどう取り込んでいくか。
他の業界が当たり前のようにやっている事とちゃんと向き合えば、プラモデルに限らずホビー業界はもっと注目されるはずです。
プラモデルを完成させるのって、絶対に楽しいですからね。
──ありがとうございました
メーカーと消費者の間の立場という、今のプラモデル業界では貴重な存在である長谷川さんだけあって、今回の取材では非常に熱く、業界を俯瞰で捉えた意見を伺うことができた。
確かに筆者の地元でも“街のおもちゃ屋さん”が消えつつあるのは事実である。だが、もしも後継者の問題では無く、新たな顧客の獲得で悩んでいるおもちゃ屋さんがあったとしたら、TPFでの成功例と長谷川さんの意見は何かのヒントに繋がるのではないだろうか?
それでは最後にTPFスタッフの皆さんに伺った長谷川さんの人物像をお伝えしよう。
──プラモデルマスター長谷川さんってどんな人?
- TPFスタッフの皆さん:
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TPFではプラモデルの初心者さんや中級者さんを対象に、プラモデル作り講座を開催していますが、その講師であるマスターを一言で表すと“面白い人”ですね。
TPFには小さなお子様から大人の方、そして女性まで本当に幅広いお客様がいらっしゃいますが、その全ての人たちから愛されているのは、やっぱりプラモデルを作る楽しみを伝えたいという情熱なんじゃないかなと思います。
マスターがプラモデルを作っている時は本当に楽しそうなんで、私たちもミニ四駆作りに挑戦したりしていますが、上手とか下手とか関係なくて、自分の好きなように完成させた時は本当に嬉しくて、お客さんに見せびらかしたりしています。
たぶん、プラモデルを楽しそうに作るマスターの姿を見て、お客さんも信頼して相談しているんじゃないでしょうか?