ガラスのような身体を持ちながら、淡水から海水、そして光の届かない深海まで幅広く生息し、ヒトの想像力を超えた様々な造型をもつ生き物=クラゲ。
ふわふわと漂う姿で癒してくれると共に、種類によっては食材としても活用され、オワンクラゲの研究で下村脩博士がノーベル化学賞を受賞したのも記憶に新しい。
その神秘的な姿に惚れこんでいるファンも多く、クラゲだけが登場するDVDが発売されているほか、常時複数のクラゲを展示する水族館も増えている。
そしてクラゲ飼育研究を35年以上も続け、卓越した飼育技術を有する“えのすい”こと新江ノ島水族館には、クラゲマニア垂涎の超珍種が展示公開されているのだ。
8月29日より新江ノ島水族館で展示されている「ヤセオコゼ」は、水深30〜110mの砂泥底に生息する、体長7cmのオコゼの仲間だ。
ここまで読んで「なんだクラゲの話題じゃ無いのか」と、早とちりしてはいけない。クラゲマニアにとっての主役は、ヤセオコゼの体表に付着したクラゲの一種「サカナウミヒドラ」なのだ。
一見カビが生えた魚のように見えるが、近くに寄って見ると、ひとつひとつイソギンチャクのような触手が生えていることが確認でき、ヤセオコゼの表情も、なんとなく迷惑そう。
これまでの記録を調べると、以前にはタツノオトシゴに付着していた報告例などがあるようだが、その件数はごく僅かで、クラゲのプロフェッショナルである“えのすい”スタッフでも、実際に付着している状態を誰一人確認したことが無かったそうだ。
ウミヒドラ科に属するサカナウミヒドラは、エボシクラゲや前出のオワンクラゲと同じ“ヒドロ虫”と呼ばれるグループに属するクラゲの一種である。
サカナウミヒドラは成長過程の中で、イソギンチャクのように何かに付着して生活をする「ポリプ」と呼ばれる世代と、浮遊生活をする「クラゲ」の世代がある。
こうした特徴は他のクラゲにも見られるが、多くの種類では岩などに付着してポリプ世代を過ごすのだが、サカナウミヒドラはポリプの状態で魚類の体表に付着する特殊な生態で知られている。
ゆらゆらと水中を漂っているイメージのクラゲが、どうやって動き回るヤセオコゼにポリプを定着させるのかも、今のところは解明されていない。
今回の展示個体においては、えのすいに輸送する途中で、梱包した海水中にポリプから遊離したクラゲが浮遊していることが確認され、また宿主であるヤセオコゼの状態もあり、いつまで展示可能か分らないため、一部の専門家には知られていなかった不思議なクラゲに興味があるマニアは、早めに見ておいたほうが良さそうだ。
新江ノ島水族館の営業時間などはオフィシャルWebサイトを確認のこと。
ポリプの先端はイソギンチャクと同じ触手状になっている
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輸送中の海水で確認されたサカナウミヒドラのクラゲ
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