「第69回静岡まつり~駿府大御所時代絵巻~」  火柱と轟音とどろく大御所観覧 手筒花火 Vol.1

「静岡まつり」が2025年4月4日(金)~6日(日)、さくらが満開に咲き誇る静岡市駿府城公園で開催された。今回は、この静岡まつりのトリを華々しく飾った「大御所観覧 手筒花火」を2回に分けて紹介しよう。

「静岡まつり」は、400年前から続く静岡浅間神社の「廿日会祭」に呼応して昭和32年から始まった市民の祭りだ。この祭りの見どころは、「大御所花見行列」「駿府登城行列」「夜桜乱舞・城下さくら踊り」「大御所観覧手筒花火」など絢爛豪華な時代絵巻を現代に再現している所だ。

手筒花火 一斉放揚

この祭りで最高の盛り上を見せるのが、「大御所観覧手筒花火」だ。この手筒花火は、静岡で200年も歴史ある無形文化財の花火「龍勢」を打ち上げている郷島煙火保存会が、1999年に静岡まつりで手筒花火を揚げて以来、煙火保存会の方々により手筒花火が揚げられている。

ヨウカンと呼ばれる小型の手筒花火

郷島煙火保存会は、平成10年(1998年)に浜松市にある「富幕開進社(とんまくかいしんしゃ)」から手筒花火の教えを受け、津島神社奉納 郷島煙火大会で初めて手筒花火を披露したのが静岡の手筒花火の始まりで、静岡の手筒花火の中核を担っている煙火保存会だ。

静岡市近郊には、手筒花火煙火保存会が6団体あり、静岡まつりの「5つの物語」の中核である「大御所観覧手筒花火」をこの煙火保存会が担っている。

手筒花火を揚げている煙火保存会の皆さん

一般的な打ち上げ花火は火薬類保安責任者の花火師さん達が打ち上げるが、手筒花火は神事のため神社の氏子や町民、有志達が、自分たちの手で火薬を詰めて手筒花火を制作する。放揚者(打ち上げる人)は、自ら竹の切り出しから竹の油ぬきや節を抜いて荒縄を巻き締めて強度を高め、さらに調合した火薬を竹に詰めていく工程と放揚とを、自分1人で行っている。それは火薬を扱っているため、一歩間違えると大事故に繋がるからだ。

その手筒から繰り出される巨大な火柱からの火の粉を浴びながらも、最後の見せ場となる「ハネ」の瞬間が観客を魅了させる手持ちの花火だ。。

この手筒花火に命をかける勇猛果敢な放揚者(手筒花火を打ち上げる人)達が、自分のイメージする手筒花火を打ち揚げる様は、観客の魂を揺さぶるようだ。

火の粉を浴びても動じない
放揚者
見せ場であるハネ(爆発)の瞬間

天を焦がすような火柱と大地を揺るがす轟音による手筒花火。1番太くて大きい手筒では、5斤(4000g)の火薬を筒に詰め、火柱は10m以上も吹き上がると言われている。揚げ手はこの火柱の太さや高さ、色などをイメージしながら火薬を詰め自作しているのだ。

開始に先駆けて、会場に集まっている観客に向けて花火を配り花火衆と共に悪疫退散の祈りを込めて「希望の光」で世界の平和を祈った。

希望の光

オープニングは、ヨーカンと呼ばれる手持ちの小型の手筒花火だ。方揚者が火柱の上がるヨーカンを持ち会場を縦横無尽に歩きまわり、最後のハネを観客に披露する。

手筒を持った揚げ手が目まぐるしく、入れ替わり立ち替わり次々と手筒を揚げていく。見ている観客が威勢の良い「ワッション・ワッショイ」という大きなかけ声をとともに、夜空に火柱が吹き上がった。

ヨウカンの一斉放揚

今回、5日・6日と手筒花火を揚げてくれる保存会の会長さん達に話を聞いてみた。

最初は、この「大御所観覧手筒花火」の中心人物である郷島煙火保存会「菊池 重仁(きくち しげひと)」会長に手筒花火の魅力を語ってもらった。

郷島煙火保存会 菊地 重仁 会長

私どもの郷島煙火保存会には25才から70才まで24名が、この保存会で活動しています。そして、静岡で平成10年に最初に手筒花火を揚げてからメンバーは、ほぼ一緒ですが、若手も徐々に入ってきています。手筒花火の魅力は、なんと言っても高く舞い上がる火柱と最後に爆発するハネの瞬間が魅力でしょう。揚げ手が手筒を制作する時に毎回同じように火薬を詰めたつもりでも、毎回出る花火が違うのです。また、会によっても多少ちがいがあります。

例えば、火薬に混ぜる金属によっても色が違います。赤い炎は鉄を、白い炎には合金やマグネシウムなどを混ぜることによって炎の色に違いがでてきます。お客さんにどのような花火を見せたいのか?という事が会や個人によって違いがでてくるのです。目指している花火は皆さん同じでも、それぞれ少しずつ違う思いを持っています。まあ、個性が出ると言うのでしょうか。花火にもそれぞれ、揚げ手の個性が出るのですよ。

みんなが思い思いに手筒花火の理想を持ちつつ、自分の理想に近づけるように各自が工夫しています。

長尾川手筒煙火保存会「古林 隆行」(ふるばやし たかゆき)会長の考える手筒花火の魅力は、

長尾川手筒煙火保存会 古林 隆行 会長

私たちの長尾川手筒煙火保存会は、会員が30名います。最高齢は83才、最年少は27才です。他の保存会と違う点は、かけ声ですね。手筒から炎が吹き出る時に「わっしょい・ わっしょい」というかけ声をかけます。やはり、お客さんから、この「わっしょい・わっしょい」というかけ声を掛けられるとテンションが上がりますよ。また、全員ではありませんが手筒の持ち方が、若干違っています。手筒花火の持ち方は、豊橋と豊川で別れるのですけど、右手が下にくるのか、上に来るのか、靴が近いか遠くかっていう話なんですよ。それと見ている方としては全く判りませんが、腰を落とすか落とさないかという事もあります。

手筒花火は、自分の気持ちによって花火の色の出方が違うほど繊細なんですよ。 毎回同じ花火を揚げる事ができるか?と言うと同じモノを揚げられないし、上手くいった時は、次もこれで行こうと思っても同じ事ができない。手筒花火は難しいですよ。

それでも皆さんが、お客さんに感動してもらえるような手筒を揚げるように心がけています。

巴川手筒花火の会「戸栗 将希」(とぐり まさき)会長の思う手筒花火の魅力は、

巴川手筒花火の会 戸栗 将希 会長

私たちの巴川手筒花火の会は比較的若くて、最高齢が60才、最年少が26才で会員数も26名います。この会は2013年から手筒を揚げ始めましたから、経験の長い人は12年程、手筒を揚げています。最近は、会員も2年から3年目位の若手が増えてきています。私としては、手筒花火を持つ構えが皆さん違いますから、若い人達が自分自身のパフォーマンスとして手筒花火を揚げている姿をお客さんに見てもらって、自分のパフォーマンスを磨いてもらいたいと思っています。

静岡まつりの「大御所観覧 手筒花火」では、危険と隣り合わせの手筒花火の放揚に熱い思いを捧げる人たちが、夜桜と共に祭りを盛り上げている。 火の粉を浴び火傷も恐れない男衆・女衆達の熱い姿に注目して欲しい。手筒花火を放揚して いる姿が凜々しくカッコイイと思うのは、私だけでは無いと思う。

毎年、満開のさくらをバックに揚がる「手筒花火」は、この静岡まつりだけなので 是非とも、凜々しく猛々しい勇姿を見に来てほしい。一度見ただけで、手筒花火の虜になるだろう。

Photo&Report @JTPA TAKASHI  OHTSUKA


第67回静岡まつり 大御所観覧 手筒花火

◆期間:2025年4月4日(金)~4月6日(日)

◆会場:駿府城会場(駿府城公園)

◆主催:静岡まつり実行委員会

◆問い合わせ:054-221-0182(静岡まつり実行委員会事務局) 

◆公式WEBサイト:https://shizuokamatsuri.com/ 

◆大御所観覧手筒花火 https://shizuokamatsuri.com/event/fireworks/

※この情報は2025年「第69回静岡まつり」のもので次回のものは2026年にチェックをすること。

【手筒花火情報】(公式HPが無い保存会はSNS等を引用)

◆静玉屋        https://www.hanabi-shizutamaya.com/

◆郷島手筒花火保存会  https://gouzimahanabihozonkai.eshizuoka.jp/

◆奥大井煙火保存会Instagram  https://www.instagram.com/okuooi_hanabi_18/

◆一色煙火保存会    https://kokokara-net.jp/articles/62

◆長尾川手筒煙火保存会 youtube     

https://www.youtube.com/watch?v=FzmqD-Ck0pI

巴川手筒花火の会    http://tomoegawatedutu.web.fc2.com/

※お出かけの際には、HPを確認して最新情報を入手してから出かけよう。


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