140513_futaba_01「催眠術」と聞くと胡散臭さを感じるが、凶悪犯罪において「マインドコントロール」が効果的に働いていることを知ると、人間の心はなんて脆いのだろうと思わざるを得ない。人の心の闇を見つけてその隙に入り込み、複数の人間から金を巻き上げ、拷問と虐待でマインドコントロールする…そんな悪魔のような人間は、信じがたいがこの世に実在する。

『ストロベリーナイト』を始めとする『姫川玲子シリーズ』、『ジウ』シリーズ、『ヒトリシズカ』など映像化された作品も多数ある誉田哲也の最新作『ケモノの城』(双葉社、税別1600円)は、殺人・監禁事件の内幕に迫った衝撃のミステリー小説だ。ゴールデンウィーク中に書店に足を運び、店頭に平積み展開されているのを見かけた読者も多いだろう。
本作は、双葉社の月刊小説誌『小説推理』で2013年6月から2014年2月まで連載されていたが、連載中から既に“問題作”として大きな反響があった。

物語は、自動車修理工場で働く辰吾という青年の視点と、警視庁内部からの視点で進行する。
17歳の少女・麻耶が自ら警察に保護を求めてきた。その少女が生活していたマンションからは、大量の血痕が見つかり、やがて同じ部屋で暮らしていた女性・アツコも警察に保護され、2人の事情聴取により物語は進むのだが、2人の供述は全く食い違う。
2人の背景にいるのがボスと思しき梅木ヨシオという人物の存在なのだが、警察はどうやってヨシオに辿りつくのか、そして一見、同棲中の彼女と平和な生活を送っているように見える辰吾がどのように事件に巻き込まれていくのか、不可解な事件を一刻も早く紐解きたくてページを繰る手が止まらなくなる。
勘のいい読者であれば読み進めるにつれ実在の事件が連想されるはずだが、それでも芋づる式に人々がマインドコントロールされて行き、次々に巻き起こる悲惨な状況には、あまりにも現実味がなく信じがたく激しい嫌悪感に襲われるはずだ。そしてマインドコントロールの恐ろしさを目前に突きつけられることになる。

双葉社によれば、本作は4月18日の発売以来、売れ行きがすこぶる良いとの事。web上でも様々な感想を見ることができるが、「読んでいて目をそむけたくなるような描写の数々」「怖いのに、読む手が止まらなかった」「後味の悪さは誉田哲也作品の中でもトップクラス」などハードだという声が多数。
一方で、「誰でも当事者になりうる可能性があるっていうのが一番のホラー」「人間の弱さや内面の恐怖が非常にリアルに描かれている」「誉田さんが使命感を感じて書いた気がする」「警察小説の醍醐味である『組織の中で生きる者の誇りや葛藤』にとどまらず、心理戦と表現するにはあまりにも深い『取調べ』という警察小説の新しい魅力を教えてくれた」など、誉田氏の描写力を称賛する声も多い。
映像化は絶対に不可能だと思われるほどグロテスクな描写もあり、決して「面白いから」と容易に人にオススメできる内容ではないのだが、こういった事件が身近に起こりうるということを知り、考えることは決して無意味ではないだろう。

現在、双葉社のwebサイトでは「ケモノの城」の特設ページを開設中で、そこには著者の誉田氏から「綺麗なものにだけ目を向けて生きていくことはできない。現実はそこまで甘くない。ならば、その実在する恐怖に、おぞましい現実に目を向けるしかない。ある種の覚悟を、強いる作品だと思う。書く者にも、読む者にも。」というコメントが寄せられており、書き手にも相当な覚悟があったことがわかる。
特設ページでは、読者の感想や、登場人物相関図、試し読みなどができるので、まずはこちらをのぞいてみて、本書を手に取る覚悟があるかどうか判断して欲しい。誰もがケモノになり、ケモノの餌食になる、そんな人間の中に潜む恐ろしさを思い知らされる問題の衝撃作だ。
『ケモノの城』は全国の書店やAmazon、楽天などのウェブショップで販売中。

『ケモノの城』特設ページ
http://www.futabasha.co.jp/introduction/2014/kemono_no_shiro/
双葉社
http://www.futabasha.co.jp/